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ライズ・コンサルティング・グループと七ヶ宿町、ベガルタ仙台が地方創生をテーマに意見交換を実施

掲載日:2023年4月21日

1月25日、ベガルタ仙台のサステナブルパートナーである株式会社ライズ・コンサルティング・グループさまと七ヶ宿町がまちづくりの課題解決に関する連携協定を締結したことを受け、七ヶ宿町の小関幸一町長、ライズ・コンサルティング・グループの北村俊樹代表取締役社長 CEO、同町とSDGs推進及び連携・協力に関する協定を締結しているベガルタ仙台の佐々木知廣社長の三者による対談を開催しました。

七ヶ宿町の資源を活かすための協定締結

株式会社ベガルタ仙台 代表取締役社長
佐々木知廣

司会)このたび、七ヶ宿町さまとライズ・コンサルティング・グループさまの間で、「まちづくりの課題解決に関する連携協定」を締結されましたが、締結に至った背景や締結に込めた想いなどをお聞かせください。

小関町長)本町が持っている様々な資源を、私たちの力だけで生かし切ることの難しさを感じている中で、交流人口の増加と認知の拡大について、力を発揮してもらうことを期待しての協定締結です。七ヶ宿の役割や立ち位置のようなものを把握するためにも、外部の視点から見ていただき、ご意見を大いに参考にしたいと考えています。
不足しているのは人材と資本でして、こうすればもっと良くなる、というアイディアがあっても、人や資本を調達できないという問題に直面しています。まずは本町に対して関心を持ってもらう取組みの検討や実行といった点に大いに期待しています。

佐々木社長)ライズ・コンサルティング・グループさまと七ヶ宿町さまを引き合わせるキューピッド役になったわけですが、これは2つの流れから来ています。
まずベガルタ仙台が、社会連携にしっかりと取り組むべく、県内35の自治体との連携強化に動き出したわけですが、七ヶ宿町さまとはすでに様々な取り組みでご一緒させていただいていたという点。
そしてSDGsの取り組みを本格化させる際に、ライズ・コンサルティング・グループさまの知見を頼り、多大な支援をいただいたところですが、そのライズ・コンサルティング・グループさまが地方創生に注力されているという点です。
こうした経緯から双方をつなぎ合わせる運びとなりました。

北村CEO)私たちは2つの視点から今回の協定締結へと至りました。
1つ目はコンサルティング会社としての使命感です。私たちは、クライアントから課題解決を「依頼されたら断らない」という姿勢を大事にしています。ベガルタ仙台さまの支援については、元々、弊社の常務から提言があり、実現しました。ベガルタ仙台さまがサッカーを通じた東北復興というテーマを掲げ、SDGsへの取り組みを強化されている点が、弊社の使命である「一番近くにいる人をいかに幸せにできるか」「一瞬一瞬の接点を大切にする」という点に合致していました。
2点目は、弊社のミッションです。創業から10年、Produce Nextというミッションを掲げ「日本の再生、次の未来を創造する」という決意のもとでこれまで歩んできましたが、年始に「しあわせな未来を、共に拓く。」へとアップデートしました。これは、次の10年を見据えたときに、より社会にとって意義の高い取り組みを、様々なステークホルダーと一緒に取り組んでいくという決意でもあります。七ヶ宿町さまとの連携協定は、弊社のミッションとも深く紐づく活動であると思っています。

ベガルタハウスの活用から考える町内外の交流

司会)七ヶ宿町の課題や、すでに取り組んでいらっしゃることについて、現状をどのように把握されていらっしゃいますでしょうか。

七ヶ宿町 町長 小関幸一さま

小関)ベガルタ仙台さまとは、SDGsをどのように実現するかという観点を中心に協定を結ばせていただいております。
最初の取り組みは、ベガルタハウスです。このプロジェクトは空き家再生への課題がきっかけです。まちづくり株式会社が取得・改修し、ベガルタ仙台さまのサポーターや子どもたちが集う施設としてオープンしました。また、ダム公園の運動広場を「ベガルタ仙台運動広場」と呼称することにし、看板の設置もいたしました。
ベガルタ仙台さまの強い発信力は大きなプラスです。ぜひベガルタ仙台さまには七ヶ宿の資源をより活用してほしいと思っております。場所の提供など、協同でできる事業を見つけることが必要となりますが、関係者にはこの活動を理解いただき、町内外に周知を図っていきたいです。その積み重ねがSDGs達成につながっていくと思います。例えば荒れた畑で収穫祭を開催したり、土地を活用してふれあいの場所を提供したりできれば、というアイディアもあります。

佐々木)ベガルタハウスは、一昨年に空き家対策の一環としてお話をもらって、選手OBが大工見習いとして参加させてもらいました。まだ完成していなかったのですが、完成前に「ほぼ完成式」としてお披露目した際には、300人もの町民の方々がいらっしゃってくれました。約1,300人という町民人口を考えたらすごい割合だと感じています。
まずこのようなシンボリックなものがあると、足を運んでいただくなど、すごい反応を示すわけです。これを町内外の交流につなげ、定住促進につなげられれば、という想いがあります。イベント時の集合場所、資材置き場などどんな使い方でもいいので、小さなことを積み重ねていって、活用のされ方を模索していきたいです。
もちろん私たちの本業はサッカーですので、スポーツでの町おこしという観点でも力を発揮できると考えています。例えば、ある自治体が何かスポーツのイベントを開こうとした際に、大体の場合は町のスポーツコミッション的な機能を担っている部署が主体になると思うのですが、スポーツコミッションは規模の大きい自治体でなければ設置が難しいと思います。その点、ベガルタ仙台自身がスポーツコミッションと似た機能を提供できると思いますので、スポーツイベントの事務局のような役割を担えるでしょう。
ベガルタの看板があるだけで華やかになる、という点もうまく使いつつ、スポーツイベントをしっかりと提供していきたいですね。そして何より、応援してくださるサポーターが県内にたくさんいらっしゃいます。こうした社会的ネットワークを持っているというクラブの強みを、しっかりとこうした事業につなげていきたいと考えています。

小関)ベガルタ仙台さまのブランド力を使っての高い発信力、というものには大きな期待を寄せています。「なぜ運動広場の名称がベガルタなのか?」と、本町内外の方からの関心が非常に高まったのを覚えています。今後、コロナが収束すればさらにこうした名称の効果は高まると期待しています。

北村)私もベガルタハウスへ行かせていただきました。ベガルタハウスの利用を単発で終わらせるのではなく、例えば交換日記のようなものを設置する、写真を撮ったその場でプリントが楽しめるインスタントカメラを置いて写真を壁に張り出すなど、顧客の利用体験をデジタル・アナログ問わずに広くつなげていくことが大事になると思っています。その一連のつながりがベガルタ仙台さまへの応援や七ヶ宿町への訪問という機運につながっていくのではないでしょうか。
このように施設を使った交流を促進しつつ、使われているところを見せることが大切だと考えています。

佐々木)ベガルタハウスには選手もプライベートで来ているらしいですね。そうした際にはサインを残していってほしいですね。そういった小さな行いが時を重ねれば、歴史を感じられるコンテンツになりますよね。例えば日本代表監督(2023年1月現在)の森保監督は、ベガルタ仙台のOBですけど、今ではそういったことも知らない方がいらっしゃいます。残していくことの大切さというものがあると思っています。

北村)「時を超える交流」。素敵ですね。

小関)ベガルタ仙台の菅井さま(現アカデミースカウト、当時地域連携課スタッフ)は、ベガルタハウスでのイベントにあたって料理でもてなしてくれたりしました。そういえばTシャツも作って売り出されていましたよね。

佐々木)当時、菅井とベガルタハウスの作業を一緒にできる権利を、クラウドファンディングで募りましたが、予想以上の反響がありました。

小関)完成後はサポーターの方から備品などの寄付・提供などをしていただきました。一方で、最初は何ができるのだろうかと遠巻きに見ていた地域の人が、今では利用者に対して畑作業を教えるなどの交流が確かにありました。
こうした経験を生かして、ベガルタハウスを拠点としたスキー教室なども将来できそうだな、と考えていて、将来的には簡易宿泊施設としての活用も見込んでいます。昼間はゲレンデで楽しみ、夜はベガルタトークで盛り上がる、などというのも良いかもしれません。七ヶ宿の地でサポーターの輪がさらに広がっていけばいいなと思います。

北村)そんなときに、短時間であってもオンラインで選手と交流できるような特典があると、更にベガルタハウスの利用価値が上がりますよね。

長期視点で、長く住み続けられる町づくりを目指す

司会)協定締結を迎えて、今後の取組みについてどんなイメージをお持ちですか?

株式会社ライズ・コンサルティング・グループ
代表取締役社長 CEO 北村俊樹さま

小関)ベガルタハウスから少し先に行ったところに、「ホステルおたて」という宿泊施設がありますが、コロナの影響もあって利用者が少ない状況です。ただ、コロナ禍で会社に行かずに仕事をする新しい価値観が生まれましたので、その流れを汲んでワーケーションの場として利用してもらえる仕組みづくりに、ライズ・コンサルティング・グループさまの力を貸してほしいと思っています。ワーケーションの場としては、スキー場にあるコテージなども同様に会社単位での利用の可能性があると思っています。
また、キャンプが流行していますので、町内2つのキャンプ場の利用促進を図っていきたいです。ぜひ都会の人に楽しんでもらいたいと考えています。
そして、こうした色々な施設、個別の楽しみ方をどうにか束ね、連携させられないものか、ということも今後相談していきたいと考えています。欲張りすぎでしょうか?

北村)もちろん「この瞬間の悩み・課題」の解決が、私たちの本来すべきところですから、取り組んでいきましょう。
その前提として、私たちは現場を知らなければなりません。短期の滞在ではなく、1週間以上の期間で滞在し、町に馴染んだからこそ見えるものがあると思っています。その上で、コンサルタントらしく第三者の視点でフラットに町の課題を捉えたいです。
定住人口の増加というのが課題の本質ですが、その解決の一つのアプローチとしては「現在お住まいの方の定住促進」という観点もあると思います。これには、今現在の暮らしで不満に感じていることをヒアリングし、それを解消していく必要があると思いますから、その上で町外から人を呼び込んでいくにはどうすべきかを考える、という順序で行っていこうと思います。
このように、町の課題を構造分解し、リソースを考慮し、どう投資していくかの優先順位をつけながら取り組んでいこうと構想中です。こうした取り組みは短期ではなく長期で、ベガルタ仙台さまも交えながらパートナーシップを組んで進めていくことで、大きな価値が生まれると思っています。

小関)なるほど、便利さの提供に意識が行きがちですが、不便さの解消に焦点が合っていない可能性もありますね。こうした考え方を指摘してくれるところにも期待しています。

北村)便利さの提供だけでは長続きしないことが多いと思いますので、不自由さ・不幸せの解消という側面でも力を入れてご支援いたします。

小関)便利さの提供が、すなわち問題解決とイコールではないことはありますよね。数年前にコンビニの誘致には成功しましたが、実際には課題も多かったです。周辺に住む一部の人にはメリットを提供できても、隅々まで行き渡らせることの難しさを、この経験を通じて感じました。
このように町内の様々な課題を広い視野で見ていただきたいです。

北村)コロナでリモートワークが一般的になり、働く必要のある人が、働く場所を確保する難しさも顕わになったと思います。衣食住の環境が整い、人との関わりがあってこそ、仕事のパフォーマンスが上がります。ワーケーションを要素分解するとワークとロケーションですが、このうちロケーションについては七ヶ宿町のアセットで十分に魅力的な取り組みが実現できると信じています。ワーケーションを入口にして、地方で仕事をすることに対しての見方を変えられると考えています。
現在、弊社は約200人の社員のうち、8割くらいがリモートで働いています。リモートワークにすることで、幸せで健康的な生活が保たれ、結果的にパフォーマンスが上がった事例が数多くあります。これは地方でのロケーションでも同じことが言えると考えています。

小関)ウインタースポーツ、農業体験、そば打ちなど、仕事の合間にできる楽しみ、プログラムも考えたいです。自然を享受できる仕組み、本町が提供できるあらゆる資源を上手く組み合わせたいですね。
町民が、日々大変だと思っている農作業が、2時間の楽しいプログラムになる、そのような本町の日常が、町外の方にとっての楽しみとして転換が図れればと思っています。

北村)長く住めるような仕組みを構築したいとも考えていますので、単発の楽しみだけでなく、町の人々と同じ苦労や不便さも一部体験できるような仕掛けにしていきたいですね。
1か所に閉じた人付き合いではなく、様々な場所で様々な人と出会って作られたオープンなネットワークはすごく大事になってきます。そんな中でボトルネックになり得るのが学校の問題だとも認識しています。七ヶ宿での取り組みが国への提言につながるかもしれません。

小関)2週間や1か月、本町の学校に通わせる「留学」のような仕組みも、これからはありではないでしょうか。町の子どもたちにとってもいい刺激になるはずです。また来たい、と思える町にしていきたいですね。

北村)家族で来たいと思ってもらえる町にしていきましょう。

佐々木)現在掲出されているポスターに、「何もない」をキーワードにしているものがあったと記憶していますが、実際には「ないものは無い」、つまり「何でもある」という意味だと理解しています。「知らなかった七ヶ宿」のようにインパクトのある打ち出し方も大切になってきそうですね。楽しいことがパッケージングされた見せ方をしっかり伝えることが大切です。
これまでもそういった取組みはされてこられたのでしょうが、伝わりきっていない部分もあったのかもしれません。ベガルタはひとつのフックとして使っていただいて、「ないものは無い」とわかってもらう第1歩にしてもらえればと思います。

小関)規制があるからできない、ではなく、どうすればできるかを話し合っていきたいです。役所独特の文化はもう終わりにして、小学校の留学など町の判断でできると思うので、一つひとつ問題をクリアにして前進していきたいと考えています。
こうした動きがいずれ、地方そして日本の創生につながると信じています。